動脈硬化は自覚症状がないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります
心臓や脳に重大な障害を及ぼす

本来は柔らかくしなやかな動脈の血管壁が硬くなって弾力性が損なわれたり、コレステロールなどが血管壁に溜まったりして、血管の内腔が狭くなってしまった状態を「動脈硬化」といいます。

動脈硬化になると血管の弾力が失われるため、体の隅々に血液を送り出す作用が失われ、心臓に大きな負担がかかってしまいます。

加齢とともに動脈硬化は進行しますが、血管が詰まるほど悪化すると、その先の組織の細胞に栄養と酸素が供給できなくなるので、細胞が壊死してしまい、その部分が担っていた機能が失われることになります。

例えば、心臓に酸素と影響を送っている冠動脈に動脈硬化が起きて内腔が狭くなると「狭心症」を、完全に詰まってしまうと「心筋梗塞」を起こします。2011年にはサッカー元日本代表の松田直樹さんが練習中に急性心筋梗塞で倒れ、34歳の若さで亡くなられたことは記憶に新しいところです。

脳動脈に動脈硬化が起きて血管が詰まれば、「脳梗塞」を引き起こします。こうした動脈硬化は、心臓や脳だけでなく全身の血管に起こり、様々な病気を引き起こします。胸部や腹部では、大動脈瘤や解離性大動脈瘤、腎臓では腎硬化症、腎血管性高血圧、下肢では末梢動脈疾患や壊疽などが挙げられます。

動脈硬化は発症するの仕方、部位によって以下の3つに分類されます。まず日本人に最も多いのが、大動脈や脳動脈、冠動脈など太い血管に起こり、突然死の引き金となる「アテローム動脈硬化」です。一般的に動脈硬化と呼ばれるものはこのタイプを指しており、日本人の死因の上位を占める狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の多くは、このアテローム動脈硬化が原因です。

動脈を構成する内膜と内弾性板の境界に悪玉のLDLコレステロールが蓄積すると、脂肪でできたドロドロの塊となって、血管壁が肥厚して血管の内腔が狭くなることで発症します。健診や人間ドック、循環器内科でコレステロールの数値が高いと指摘された方は動脈硬化のリスクが高いので注意が必要です。

2つ目のタイプは、動脈を構成する中膜にカルシウムがたまり、石灰化して起こるメンケベルグ型動脈硬化で、大動脈の菓子の動脈、頸部の動脈に起こりやすいのが特徴です。3つ目は脳や腎臓、目などの細い動脈に発生する細動脈硬化です。原因の多くは高血圧となっており、外膜・中膜・内幕がもろくなって血管が破裂するリスクもあります。

動脈硬化が怖いのは、実際に起きても、自覚症状がないという点です。上記の病気を発症したり、病院の検査で発見されて初めてわかる人が多いのですが、動脈硬化自体は以前から、ゆっくりと進行しているのです。

動脈硬化の有無や程度を把握するための精密検査としては、副作用もなく患者への負担がなく簡易に実施できる頸動脈エコーがよく行われています。超音波を発信するプローブと呼ばれる機会を頸部に充てるだけで、血管の狭窄や閉塞、脳塞栓の原因となる不安定な動脈硬化巣などを発見することができます。

そのほか、足の動脈硬化を調べるには、足首と上腕で同時に血圧を測定するABI(足関節上腕血圧比)と呼ばれる指数が有用です。合わせて血管の硬さを調べるPWV(脈波伝播速度)を計測することもあります。ただし、心臓の冠動脈や脳血管の動脈硬化を詳しく調べるためには、冠動脈CTや頭部MRI、MRAなどの検査を行う必要があります。